視覚障害者のホント
暮らしの工夫と
サポート

暮らしの工夫と<br />サポート
買い物や外出など、普段どんな生活をしているか知ってください。

買い物

買い物

ちょっと変わった方法で買い物をしていたら
その人、目が見えにくいのかもしれませんよ。

視覚障害者はひとりで買い物に行けないのでは?と、思う方がいるかもしれません。
けれど、最近ではサービスカウンターやコンシェルジュを設置するスーパー、デパートが増えてきました。商品の場所や値段を教えてくれるだけでなく、なかには新鮮な野菜を選んでくれたり、必要な量を見てくれたりと、さまざまな配慮をしてもらえるお店もあるのです。

見えないのではなく、見えにくい人の場合、値札が読めなくて困ることが多いそうです。そういう人は、携帯型の拡大読書機を使ったり、最近ではスマートフォンで写真を撮って拡大したりと、工夫して買い物をしています。ただ、店内写真撮影お断りのお店では、店員さんに声をかけておかないと誤解されることもありますので注意が必要です。

拡大読書機やスマートフォンがなくとも、商品を顔に近づければ見える人もいます。
「あの人、お肉のパックを顔に押し当てている!」などと驚くことがあるかもしれませんが、もしかしたら値札の表示を見ようと一生懸命な視覚障害者の可能性もあるのです。

白杖を持っていないと、なかなか視覚障害者とは分かりづらいですよね。でも、社会には見えない人、見えにくい人も大勢いて、ひとりで買い物に出かけることもあると知っておいてください。そしてもし困っていそうな人がいれば、お店の人に教えてあげるだけで十分ですので、お手伝いをしてもらえれば嬉しいです。

点字

点字

思っているより、使われてない?!
けれど数字だけでも読めると便利な、点字の世界。

みなさんは視覚障害者のどれくらいの人が点字を使える、読めると思いますか?
答えは約10%。きっと、予想よりずっと少なくて驚きますよね。

点字は文字のひとつです。使いこなすためには、まったく新しいアルファベットをイチから覚える必要があります。先天性の視覚障害者であれば、子供のころから点字を習う機会もあるでしょう。けれど、中途視覚障害者にとって、点字はなかなか難しい道具・文字なのです。

ですから視覚障害者であっても、「点字が読めないので音声で聞きたい」「字で読みたい(活字を音声に変換するソフトがあります)」という人がいることを知っておいてください。

もちろん点字は街中さまざまなところで使われているので、習得した方がいいと思います。特にエレベーターの階数表示や、切符を買うときのボタンなど、数字だけでも読めると便利なのだそうです。ただ、ITが普及した現代では、点字が読めなくてもデジタルデータが代行してくれることが増えました。長い時間をかけ訓練する必要がないため、どうしてもそういったITを活用する道具や方法が優先されている実情があります。

また、行政が発行する案内は点字が用意されていることが多いです。公務員試験などでも点字の受験が可能になっています。反面、パソコンを使った受験にはまだ制約があるようです。

点字ではありませんが、シャンプーの容器にはブツブツした突起がついていて、コンディショナーと区別できるのをご存知ですか。ほかにも、牛乳パックの頭には切れ目がついおり、目を閉じていても見分けがつきます。こういったユニバーサルデザインのものは身近にたくさんあるので、ぜひ探してみてください。

盲導犬

盲導犬

「おりこうだね!」誉めるまえに知って欲しい、
盲導犬を見かけたときの3つのお願い。

盲導犬が視覚障害者を安全に誘導するお仕事をしているのは、みなさんもご存知ですよね。障害物を避ける、交差点で立ち止まる、ドアや階段を探して誘導する、危険を感じたときはストップする……などなど。一生懸命な姿を見ると、とても感心してしまいます。

そんなしっかりした盲導犬も、ユーザーである飼い主に可愛がられ、家族の一員として大切に育てられています。お仕事をしていないときは、ペットの犬と同じようにおもいっきり遊び、甘えてくるのです。では、盲導犬はどうやってお仕事の時間を見分けるのでしょうか。

盲導犬は専門の施設で厳しい訓練を受けた誘導のプロ。その訓練のなかで、ハーネスをつけたとたんお仕事モードになるようしつけられているのです。ですから、街でハーネスをつけた盲導犬を見たとき、みなさんにお願いしたいことが3つあります。

  1. 触らないでください。
  2. 声をかけないでください。
  3. 食べものを与えないでください。

可愛くてがんばっているからと、つい構いたくなってしまいますよね。ですが、これはかえって盲導犬を困らせてしまうことになるのです。飼い主の許可があった場合をのぞいて、私たちは黙って見守ってあげましょう。

また、盲導犬の排泄は規則正しく行うようしつけられていますが、外出先で排泄を行うこともあります。屋外であれば飼い主がきちんと片づけますし、施設内であれば多目的トイレを利用することもあります。排泄で施設を汚すことはありませんが、多目的トイレで出会っても驚かないでくださいね。

公共交通機関だけでなく、飲食店や病院でもたくさんの盲導犬が活躍しています。
ぜひ、適切な距離で、あたたかく応援してあげてください。

生活を支えるアイテム

生活を支えるアイテム

もしかしたら、あなたの家にもあるかも。
見えなくても使える便利グッズたち!

音声で聞けるもの、触ってわかるもの、見やすいもの、見やすくするものといった、視覚障害者の生活を助けてくれる便利グッズはたくさんあります。

わくわく用具ショップ「視覚障害者用商品カタログ」

なかには、押すだけで調味料を量れるキッチン用品や、音声を聞いて操作できる電化製品などが紹介されています。ところで、こういったグッズ、みなさんもどこかで見た覚えはありませんか。実は、最近では100円ショップでも似た機能の商品が販売されているのです。

もちろん普通の雑貨屋さんでも視覚障害者にとって便利なものを見つけることがあります。つまり、便利グッズは視覚障害者だけが使用する特別なものではないのですね。見えにくくなった高齢者、文字の読めない子供といった誰もが扱えるからこそ、便利で身近なものなのです。

ガイドヘルパー

知らない場所を、行けない場所にしないために。
お出かけサポート制度のいいとこ・悪いとこ。

視覚障害者が外出する際、ガイドヘルパーに付き添ってもらうという方法があります。
この制度は通勤・通学には利用できませんが、買い物や通院、旅行などへの外出や活動を介助するものです。ヘルパーは移動や排泄・食事の介護、代筆・代読、危険回避のための支援などを行ってくれます。

これまで家族に付き添ってもらっていた視覚障害者のなかには、「家族に迷惑をかけて悪い」「頻繁に外出するのは気兼ねする」と、外出を控えていた人がいました。いまではこの制度を使うことで、自分の好きなときに外出できるようになったのです。

残念ですが、課題もあります。ガイドヘルパーを利用するには事業所に登録し、予約をしないといけないので、急な外出には間に合わないということがあるようです。また、1ヶ月の利用時間数に制限があり、計画的に利用しないといざというとき外出できません。利用料がかかるため「経済的負担が増えた」という声もあります。

ですが、「好きなときに好きなだけ出かけたい!」と考え、白杖を持ってひとりで外出できるよう歩行訓練を受ける人は増えてきています。行きなれた場所へはひとりで、はじめて行く・介助が必要だと思う場所へはガイドヘルパーと一緒に、と使い分けるようになっているそうです。

白杖

白杖

「あの人、杖を持ってるのに、スマホ使えるの?」
あなたも誤解していませんか、白杖について。

白杖(はくじょう)を持っている人がいたら、「目の見えない人が歩いている」と思うかもしれません。ですが、白杖は全盲の人だけでなく、見えにくい人も持っている道具です。

たとえば、視力は良くても視野が狭い障害の人がいます。この場合、足もとが見えにくい、横から人が急に出てくる、といったことから危険が生じるため白杖を持つことが勧められます。

つまり、白杖は目が見えない・見えにくい人であれば誰もが使用できるのです。白杖の選び方や基本的な使用ルールは歩行訓練士さんから指導されることが多く、きちんと歩き方を習得すれば安全にひとり歩きできるようになります。

もちろん、白杖を持っているからといって、ひとりでどこへでも行けるわけではありません。知らない場所や道に迷ったときなど、助けを必要としている場合もあるでしょう。 だから、もし白杖を持っている人を見かけ、あなたの時間に余裕があったら「何かお手伝いできることはありませんか?」と声をかけてくださいませんか。

「いまはひとりで大丈夫です」と言われたら、「お気をつけて」でいいのです。
「道に迷っています。駅はどちらでしょうか」などと聞かれたら、その人が必要としているお手伝いをお願いします。
どちらにせよ、視覚障害者にとって親切なひとことは嬉しく、次の外出の勇気へとつながっていくと思うのです。決して、無理はしなくて構いません。できることからはじめてみませんか。

最後に、ちょっとだけ余談を。白杖は字のとおり白い杖ですが、形状や長さのなどの違いで100種類以上あると言われています。一般的にひとりで出歩く人は直杖(まっすぐ長い杖)を持つことが多いです。必要なときだけ使用する、または予備として持ち歩く人用に折りたたみ式のものもあります。
最近では、カラフルなグリップに換えたり、マスコットや鈴をつけたり、シールを貼って自分だけのデコ白杖(!)にアレンジする人も増えました。これは、おしゃれとしてだけでなく、自分の白杖を見分ける工夫でもあるんですよ。

視覚障害者と歩く

視覚障害者と歩く

その誘導、かえって危ないかも!
視覚障害者と安全に歩くコツ、お教えします。

視覚障害者が横、または斜め前を歩く人の腕や肩を持って歩くのを見かけたことないでしょうか。これを「手引き」と呼びます。手引きする人は専門の資格を持ったガイドヘルパーだけではありません。地域のボランティアや家族、友人が行っている場合もあります。

視覚障害者だからと言って必ず白杖を持って歩くわけではなく、ひとりひとり歩きやすい方法や道具が異なります。もし、みなさんが視覚障害者を案内する機会があれば手引きの仕方や歩くスピードなど、まず確認してみるといいでしょう。

たとえば、ひとり歩きに慣れている人は、手引きをされると歩くペースを崩し、逆に危険なことがあります。特に階段では、手すりや壁をつたう方が安全に歩ける人が多いです。手引きする人・される人で身長差がある場合、腕と肩、どちらが持ちやすいか最初に確認するとスムーズにいくと思います。それから、視覚障害者は急に手を引っぱられたり、背中を押されると恐怖を感じる人が多いこともぜひ、知っておいてください。

視覚障害者も全員が歩行訓練を受けているわけではありません。なかには手引きのされ方を知らない人もいます。安全な誘導には、まず声を交わすことが大切なのですね。そうすることで、お互いに気づくことがあるかもしれません。

また、男性のガイドヘルパーが少ないため、女性ヘルパーが視覚障害者の男性をガイドするケースは少なくありません。その際、女性ヘルパーがトイレの中まで付き添うこともあります。驚かれるかもしれませんが、洗面台や便器の位置を確認するだけなので、どうぞご理解ください。